生成AIとは、人工知能技術の中でも特に注目を集めている分野で、テキスト、画像、音声、動画など、多様なコンテンツを自動的に生成する能力を持つ。
従来のAIが主にデータの分類や予測を行うのに対し、生成AIは新しいコンテンツの創造を目的としている。
従来のAIは、そのほとんどが「機械学習」という手法で開発されている。これは何らかの参考になるデータを大量に機械に与え、そこから機械に自ら学習させることで、「賢いAI」を生み出す。
具体的にいうと、データの持つ法則性や意味づけ、重要度といった「特徴」をコンピュータに教え、与えられたデータをどのように処理すればよいかをアルゴリズムに基づいて学習させる。
一方、生成AIは、人間の脳を模したニューラルネットワークを用いて、大量のデータからパターンを「深層学習」し、それをもとにオリジナルのコンテンツを創出する。
「深層学習」(ディープラーニング)のポイントは、データが各層で処理されていく中で、データの持つ「特徴」が判断されるという点。従来の機械学習の手法のようにデータが持つ特徴を人間が教えなくても、ニューラルネットワークが「特徴」を見つける。
これも機械学習のひとつだが、人間の脳神経のように、入力に対して重みをつけて出力を返す「ニューロン」の層を重ね何層も深く重なっているものを、ディープニューラルネットワークと呼ぶ。
人間との対話を可能にした生成AIのひとつ「ChatGPT」は、単純に「この単語の次はこの単語」という予測の積み重ねであるが、より高度な「それらしさ」を醸し出すには、ディープニューラルネットワークの技術を使うこととなる。
生成AIの参照データは、人間社会からサンプリングしており、いわば人間社会の鏡である。
ジェンダーや人種のバイアスなど社会の歪みを反映してしまう。データに差別意識があれば、回答も差別的なものになる。
企業の採用や人事評価で、AIが採用された時、偏りのあるデータが含まれていれば、差別的な予測につながりやすい。
AIに読み込ませるデータが、性別、国籍、言語などで開発チームのメンバー構成に多様性を保ち、潜在的な課題を見つけやすくすることである。
人間社会というものを、どれだけ解像度を高めて把握するかが、AIの質を左右する。人間が食べ物によって出来上がっていくように。
今のAIは、テクノロジーを信奉する人たちの考え方を色濃く反映してしまったり、発達したAIによる画像生成がルッキズム(外見による差別)を強化したりもする。
社会が抱える根深いバイアスや作りての思い込みを反映する。
また、賢いAIを生み出すには、日々新たにデータを追加する必要があるが、
それが可能なのは巨大IT企業だけということになりつつある。
2020年20月、NPO法人が「AIによる人類絶滅のリスクを軽減することは、パンデミックや核戦争といった他の世界規模のリスクと並んで優先事項であるべきだ」とまとめた。
本物か偽物か判別しがたい「ディープフェイク」によって、大国が誤った意思決定をしてしまうことは容易に推測できる。
アメリカのオープンAIのChatGPTでは、「話者ベクトル」とよばれる個人の声の特徴について研究がすすみ、数秒程度話し声のデータがあれば声色を再現できる「ボイスクローン技術」が格段に進化している。
音声データさえあれば、だれの声でも再現して、どんな文章でも読み込ませてしまう。本人確認せずに低価格で声をコピーするウエブサイトもあり、アメリカ大統領選の予備選挙前、バイデン大統領の音声を合成したニセの電話がかけられた事件でもこうしたサイトが利用された。
「ホモディウス」で知られる歴史学者のハラリは、AIとバイオテクノロジー、生体認証などの融合により、歴史上はじめて、独裁政府が市民すべてを常時追跡できるようになると述べている。
その一方、複雑化する金融などのアルゴリズムが支配するシステムは誰もできなくなり、専門家ですら膨大な情報を集めるコンピューターのアルゴリズムに頼らざるをえなくなる。
このような社会は、いわば膨大なデータ依存の社会だが、データそのもをどう管理するかも大きな課題である。
その点である種の「脆弱性」と共にある社会だのだ。
例えば、通貨の物理的な意味での管理も、重大な問題を引き起こす。
戦争で武器を使わないで相手を倒す方法のひとつが、相手国の紙幣の印刷機または印刷工場を手に入れればよい。
紙幣を大量に印刷し、ヘリコプターで大量にばら撒けば超インフレが起き、政府や軍は物資を調達できなくなる。すなわち戦争が出来なくなるというわけだ。
実はこの話は全くの架空の話ではなく、朝鮮戦争の時にあわや現実化しそうになった。
1950年6月北朝鮮軍は38度線を越えてソウルで韓国銀行(中央銀行)を襲撃した。
ここで北朝鮮軍は、「朝鮮銀行券」の印刷原版を発見したのである。
これが北朝鮮軍の手中に落ちたら最後、韓国経済は壊滅的となる。
北朝鮮は韓国で「未発行」の紙幣を使って、兵站維持に必要な物資を意のままに調達できる一方、収束しようもないインフレに突き落とすことすら可能となったのである。
韓国政府は一刻も早く、朝鮮銀行券の流通を禁じ、新たに韓国銀行券を刷って切り替えさせなければならない。
そんなか、当時の韓国政府の全機能は半島の南端の釜山に追い詰められていた。つまり、新紙幣の印刷などできる状態ではなかったのだ。
そこで米軍当局は、韓国銀行券の印刷を日本の「大蔵省印刷局」に命じた。その作業は徹夜の突貫作業のように過で、機密上場外作業に出すことはできず、米軍が命じた作業計画の変更は許されなかった。
およそ2週間をかけて2千万枚の「韓国銀行券」を刷り上げ納入を完了した。
このケースでの「紙幣の印刷」の原版にあたるようなもの、その姿をみたわけではないが、唯一正しい紙幣の情報の源であり、それを盗まれたら社会を機能停止に追い込むことができる。
さて我が地元・福岡市の西部糸島に最大級」データセンターがくるというニュースに驚かされた。米国の動産投資会社が3000億円以上投資、2029年以降に稼働する。
それでは、「データセンター」とは何か。
現代の情報社会では、企業やサービス提供者が、日々膨大な量のデータを生成している。
こうした膨大な情報を管理するのは巨大ITしか管理できない。
そのデータを安全に保管し、効率的に運用するためには、高度な技術と設備が必要である。その役割を果たすのが「データセンター」である。
例えば、インターネット上の検索エンジン、SNS、オンラインショッピングサイトなどのサービスは、全てデータセンターにある多数のサーバーを利用して運営されている。
サーバーはデータセンターの中心的な要素であり、データやアプリケーションをユーザーに提供する役割を持つ。
例えば、WebサーバーはユーザーがアクセスするWebページを提供し、メールサーバーは電子メールの送受信を管理する。これらのサーバーの円滑な稼働により、我々の快適なデジタルライフが実現される。
データセンターの安定稼働には、効率的な冷却システムと高い電源供給が必須である。
データセンター内のサーバーやネットワーク機器は常に動作しており、電力の大量消費と同時に膨大な熱を発生させる。
金融機関の取引システム、交通システムなど社会インフラを支える基盤として、存在しているためハッキングなど高度なサイバー攻撃にも、強固な対策が必要である。
物理的なセキュリティ対策も徹底し、入館・退館時には生体認証などによる本人確認を行う。
東日本では大手町エリア、西日本では大阪の堂島地区や彩都地区に多くのデータセンターが集まっていることが知られている。
「データは新しい石油」という言葉がある。高度なAIを開発するには、その分上質で、大量のデータが必要になる。
そしてデータは無尽蔵にあるわけではなく、いまその枯渇が叫ばれるようになってきている。
ある研究によれば2026年にも、LLMと呼ばれる種類のAI(お馴染みのChatGPTなどの生成AIに使われる)に必要なデータが使い果たされてしまうと予測されている。
これを逆にみて「データは新しい資源となり得る」というポジティブな意味に捉えられ、データが生み出す価値に大きな注目が集まることとなった。
ウクライナ軍は、人工衛星が提供する高速ネット回線を介し、戦車や装甲車、ドローンなどが敵情報を共有しながら、ロシアの侵略と戦っていると考えられる。
かたやロシア軍は、衛星からの位置情報を妨害電波で攪乱する手法を用いて撹乱する。
最近では、ドローン自体が自律的な意志をもって対象を絞って攻撃するようになっており、兵士や民間人が戦場における意思決定のプロセスから排除される、つまり人間によるコントロールの喪失につながりはしないか。
そうした重要な判断を機械に任せて良いのか。そうした倫理的・法的課題への注目が高まっている。
というのは、核兵器など他の技術は「道具」だが、AIだけは違い、良くも悪くも自ら判断する本当の自律性を獲得しうるものである。
このため、核兵器・原子力を国際的に管理しようと設立された「国際原子力機関」にならって「国際AI機関」を作ってはどうかという案も出てきている。
当面、AIが人間の知性を超えても、半導体などハードウェアを自ら作るわけではないと安心してはならない。AIが洗脳や脅迫をもって”人間を操って”それをやらせるということは十分にありうる。
ウクライナは2022年以降のロシアによる侵攻に対し、ドローンを積極的に活用してきた。
前線では、偵察や攻撃だけでなく、戦場を俯瞰するために無数のドローンが飛び交っている。
中には人間が操縦するのではなく、自律的に飛行するものもある。その結果、驚くほどのデータが日々生成され、集積されているのだ。
こうした状況の中、ウクライナで日々生み出されているデータは、新たなAI学習用データの「油田」となり得るわけだ。
さらにそこから得られるのは、戦場の最前線におけるリアルなデータであり、特に自律型の兵器を動かすためのAIにとって、最良の学習データになり得ると考えられている。
特に戦時で得られるデータは稀少である。思い浮かべるのは、日本の人体実験を主導した731部隊は、1940年に創立された研究機関で,満州国のハルビン市を拠点にしていた。
日本は、第2次世界大戦時は、細菌兵器を開発するため、数千人が人体実験にかけられた。
人体実験の中心になったのは、軍医や軍に所属していない医師たち。彼らが行った人体実験は、学術的評価が高いものばかりであった。
そのため、人体実験のデータの希少性を知っていたアメリカ政府は、当事者たちを「戦犯」にしなかった。
一方で、アメリカの情報将校が戦場に残された日本人の手紙の解析によって日本文化の神髄に触れたケースもある。
解析にあたったドナルド・キーンは、それらの手紙に感情を深く揺さぶられ、戦後、古代からある日本人の手紙を読み解いて「百代の過客」という本を書き、日本文学の研究者として高い評価を得た。
ところで、トランプ大統領の仲介において、ウクライナとのゼレンスキー大統領との「停戦条件」としてウクライナの「レアアース」の権益をディールの材料としている。
そのウクライナは21世紀において新たな「資源大国」になる可能性がある。ロシアによる侵攻が続き、国土が荒廃しているウクライナがなぜ資源国になるのか。そのカギを握るのは「ドローン」である。
未来の戦争は「ドローン戦争」となることが予想され、ウクライナは前線において「OCHI」というシステムを運用している。
これは1万5000人以上とされるドローン部隊から日々収集される、動画データや各種の観測データを蓄積するシステムで、2022年の運用開始から現在までで実に200万時間(約228年分)の戦場映像が保管されているという。
また、いまウクライナでは、非常に多彩なドローンが運用されている。
敵陣奥深くへの攻撃を実行する無人機や、戦闘車両を狙い撃つための特攻型無人機、さらには偵察に特化した小型ヘリコプター型や固定翼型など、そのバリエーションは幅広い。
これらの異なる形態・機能を持つ機体から得られる映像やセンサー情報は、それぞれに固有の性質や特徴を持つ。
前述の「自律型兵器」の運用が可能なAIを実現するためにも、ウクライナが持つデータが欠かせない。
さらには「スウォームロボティクス」といい、「群知能」をもとに群ロボットを生物のように分散制御することができる。
ドローン同士が互いの位置関係を把握しあい、衝突することなくプログラム通りに一糸みだれずに動くことができる。
進化した人工知能(AI)と優秀なセンサー、僚機との通信ネットワーク能力。群れ全体で得た索敵情報を統括し、目標付近の仲間に攻撃を指示し、遠くの仲間を呼び集め、群れ全体が一つの生き物のように考えながら行動する未来の兵器である。
またウクライナでは、「ドローンスウォーム(複数のドローンを統一的に制御する技術)」の開発・実戦投入も進めており、最大20機を同時運用することも可能なレベルに達しているとの報道がある。
「OCHI」システムは、もともとは前線の指揮官が複数のドローン映像を同時に見ながら、戦局を俯瞰できるようにするためのものだった。
しかし大量のデータを蓄積し続けるうちに、「AIの学習に使えるのではないか」という気づきが生まれた。
ウクライナが蓄積したドローンデータは、国際社会からも大きな注目を集めており、すでにいくつかの外国政府や企業がOCHIの技術やデータへ興味を示しているという。
世界各国の政府や企業が欲しがるデータを膨大に抱え込んでいるウクライナが、生データやそこから得られる知見を「輸出」すれば、それは新たな収益源になり得る。
もし国際市場でこのドローンデータが流通するようになれば、ウクライナは21世紀型の「資源国」と呼ばれるポジションを得るかもしれない。
特にウクライナが手にしているのは、膨大な「実戦データ」であり、他の情報源を探すのは困難だ。
ドローンが撮影した映像には、地形の情報だけでなく、兵器の発射角度や弾道、目標への命中率といった数値情報、さらには部隊の移動パターンなど、机上演習では得られないリアルなノウハウが詰め込まれているのである。
いままさに、産油国が地下に眠る石油から富を得てきた時代から、資源としての「データが富を生み出す時代」へと移行しつつある。
ウクライナ・ロシアとの停戦交渉でトランプ大統領はゼレンスキー大統領に、
「ウクライナはカードがない」といったが、カードがないこともない。
ただ、ウクライナが不利な状況で停戦に至った場合、ウクライナはこのカードを守りきれるだろうか。