『フェルスター症候群』は存在するか



清水義範氏の著書に「心を操る文章術」という本がありまして、この中に「ダジャレを言わずにはいられない、という中毒患者のような人」をフェルスター症候群という、と書いてある。

これはネタになりそうだと思って検索してみるが、清水氏由来の記述しかヒットしない。
ひょっとしてでっち上げか? 作風からして「しない」とは言いきれない人だからなあ。
英語に範囲を広げると英語版Wikipediaで、「foerster's syndrome」(https://en.wikipedia.org/wiki/Foerster%27s_syndrome )のページが存在しているのが判った。
でもこれ、中身読んでみるとアーサー・ケストラーという人が著書「The Act of Creation」の中でフェルスター医師の報告として書いたのが最初の例だ、としか書いてないんだよね。
で、中身が――1929年、フェルスター医師が脳腫瘍の開頭手術をしていたら、患者が突然「ナイフと虐殺」に関係する言葉をまくし立てた、ってこと。意識があったまま手術してたんだ。怖っ。
清水氏の用法と意味合いが少し違う気はする。

他の情報は今のところ、無し。言っちゃうとこのアーサー・ケストラーという人も怪しい。超常現象にハマったり。「ニューサイエンスムーブメントの発端」だそうです。
「機械の中の幽霊」という本で「ホロン」の概念を提示し、攻殻機動隊に影響を与えたとか。


話を戻すとむしろWitzelsucht(ジョーク中毒、あるいは遊戯症)という言葉(ドイツ語由来)の方が有名のようだ。(追記:日本語では『ふざけ症』の方が使われてるかな?)
こちらのWikipedia(https://en.wikipedia.org/wiki/Witzelsucht)は
『Witzelsucht(ジョーク中毒)は、社会的に不適当な状況で不適当な冗談、しゃれ、または無意味な物語を語る傾向によって特徴づけられるまれな神経学的徴候です。
それよりも一般的ではないが、性行動過剰(不適当な時または状況で性的な言葉を発する傾向)の徴候もあります。
患者は、自分自身のふるまいが異常であるとは思わないので、他者のリアクションにも興味を示しません。』
ダジャレ好きで下ネタ好きなオッサンはヤバいぞ、ってことかな。
語呂が悪くて使わなかったのか。

結論:「フェルスター症候群」という語の根拠はかなり弱いが、無いわけではない。



余談:ロボトミー手術って語はロボットとは無関係なんだそうです。
『肺や脳などで臓器を構成する大きな単位である「葉(lobe)」を一塊に切除することを意味する外科分野の術語である。ロベクトミー(lobectomy, 葉切除)と同義』
私も誤解してました。


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