「退屈…」 そう言ったのはレミーナだった。 「ねぇ、なんかおもしろいことないのぉ?」 …問われたのはマウリだった。 「おもしろいことですか…?」 と小首をかしげるマウリ。 …ここは、ラクラルの村である。すでに四竜の封印は解け、本来ならばペンタグリアに向かっているはずなのだが、彼らは大きな壁にぶち当たった。それすなわち!…レベルが低いのである。この人達は敵が見えると巧みな身のこなしで逃げ出し、ボス戦もかなりの強運で勝って来たのだ。 「何でこうなってしまうのかしらねぇ…」 とミリア様にも笑われた。このままでは、ゾファーにも鼻で笑われてしまう。…と言うわけで彼らは地獄のレベルあげに精を出しているのである。 しかし、もともとめんどくさがりのプレイヤー、レベル上げではなく、ブロマイド集めに精を出している始末。ラクラルに来たのも、仮面の赤神官のブロマイドを入手するためである。ルーシアは半分あきらめている。みんなも疲れきっていた。…しかし、ロンファだけは上機嫌であった。 「あー退屈…」 再び、レミーナはぼやいた。……しばしの沈黙。…… 「そうだっ!おもしろいことがないなら作っちゃえば良いのよっ!」 そんな無茶苦茶なことをを言うなりレミーナは凄い勢いで立ち上がり、そのまま外に突っ走っていった。残されたマウリは、まだレミーナの問いに対する答えを考えていた。 《ラクラルの村恒例、春の大大腕相撲大会!》 村のあちこちにあるポスターを見て、ヒイロは言った。 「腕相撲大会か。気晴らしにやろうか、ロンファ」 …ロンファは答えない。 「ねぇ、ロンファってば」 横には目を点にしたロンファが。 「どうしたの?」 しばしの間… ロンファは言った。 「いつからやってるんだこんなもん……」 と。しかも、今は冬である。 「レディ――――ス アァ―――ンド ジェントルメァンッ!」 小さなラクラルの村いっぱいに、レミーナの声が響き渡る。 「さぁ!今日の腕相撲大会、優勝者は誰だっ!優勝者には、素敵な賞品がっ!」 それを聞いたロンファがつぶやいた。 「賞品…」 …横にいるヒイロがギョッとするほど彼の目はすわっていた。 第一ラウンドは、村のおじいちゃん対ジーン。…この結果は言うまでも無く、ジーンの勝利だった。(手加減した んだよ…ははは。 byジーン)おじいちゃんは、それなりに喜んでいた。 第二ラウンドは、ヒイロ対村の少年A。この勝負は、ヒイロが少年に勝ちを譲った。まぁ、この話もなかなか感動的だったのだがそれを書くと長くなるのでカット。 第三ラウンドは…てな感じで進んでいった。 パンパカパ―――ン! 「おめでとう!優勝者はあなたよっ!」 表彰台に立っていたのは、なんとルーシアだった。 「あの…私何かしたのでしょうか?」 無論、優勝したのである。彼女は、青き星のルーシアなのだ。小さな村の腕相撲大会に勝つなど造作もない(レミーナ談)のである。そして、賞品が送られた。 「あの・・これはなんでしょうか?」 不思議そうにするルーシアに向かってレミーナは【それ】を声高々と、そしてポーズを決めながら読み上げた。 『あなたは今日から魔法ギルドの頭首の助手よ!おめでとう!』 …… レミーナとルーシア以外、みんな真っ白になっていた。 ‐完‐ |