・第三章 早くも倒れる救世主後日、ソフィスタは、メシアと共に学校へ向かった。メシアの露出度の高い服は、非常に目立つので、ソフィスタは「人前では何かを羽織っていろ」と、メシアに言った。メシアは、素直にそれに従い、自前の巻衣で体を包んでいる。 ちなみに、ソフィスタの服装は、先日とほぼ変わりなく、セタとルコスも肩に張り付いている。 「そのうち服を買ってやるから、それを着るようにしな」 「いいや、これは我々にとって、一人前の戦士として認められたことを示す、誇り高き装束なのだ。特別な事情でもない限り、これ以外の服を身にまとう気はない」 「だからってなあ…生足が見えて気色悪いんだよ」 「気色悪いとは失礼な。私から見れば、お前の服装もおかしなものだぞ」 とまあ、こんな具合に話をしながら歩いているうちに、二人は学校に着いた。 朝早くに来たつもりだったが、既に何人かの生徒たちがうろついている。 昨日の騒動もあってか、生徒たちは、どうもメシアに怯えがちのようだ。 校舎に入り、廊下を歩きながら、ソフィスタはメシアに話した。 「まずは、あんたが昨日やったことを謝りに行かないとね。その後、校舎内への出入りの許可を貰ってみようか」 「何?ここは出入りが自由ではないのか?」 「そうだよ。…もしかして、それを知らないで入ったから、あんなに追い掛け回されていたのか?」 「ああ。どうも人間は私を捕まえようとするのでな。とって食われるかと考え、逃げていたのだが…」 「あんたみたいな不味そうな奴を食おうとするわけないだろ。基本的に不気味なものは不味いと見られるし」 「失礼なことを言うな!…だが…そんなに不味そうに見えるか?何なら、試しに髪の毛一本か爪の先でも食ってみるか?」 「…食わねーよ」 ソフィスタは呆れ顔で言った。何でも真に受け、真面目に答えるメシアには、どうも自分のペースを崩される。 「おっ、ソフィスタくんじゃないか。今日は早いね」 ふいに、後ろから名前を呼ばれたので、ソフィスタは振り返った。そこには、二十代後半と見られる男が立っている。 「あ、アズバン先生。おはようございます」 ソフィスタは立ち止まり、アズバンへと体を向けると、帽子を脱いで軽く会釈をした。メシアも歩みを止め、ソフィスタと並んでアズバンと向かい合う。 「ああ、おはよう。隣の彼は、新しく作った魔法生物かい?」 アズバンは、メシアを物珍しそうに見ながら言った。ソフィスタは肩をすくめる。 「人型の魔法生物なんか、体が大きくてうっとうしいので作りません。それに、私が作るなら、もっと賢そうな顔に作っていますよ」 メシアが、ソフィスタを睨みつけた。 「いちいち一言多いのだ!貴様は!!」 しかしソフィスタは、涼しい顔でメシアを無視し、アズバンに彼を紹介する。 「こいつの名前はメシア。種族は分かりませんが、私の魔法生物ではありません。しばらくは、私と行動を共にします」 「ほう、そうかい。メシアくん、私の名はアズバン。この学校の教員だ。よろしく頼むよ」 そう言って、アズバンはメシアに握手を求めた。メシアも「こちらこそよろしく」と、アズバンの手を握った。 「ところでソフィスタくん。彼も君と一緒に学校に来るようになるのかい?基本的に、関係者以外は立ち入り禁止になっているはずだが…」 「いえ、こいつはセタとルコス同様、私の研究素材で、常に私と同伴です。出入りも認めてくれるでしょう」 それを聞いたメシアは、アズバンの手を放し、ソフィスタに詰め寄った。 「ソフィスタ!研究素材とはどういうことだ!!私は貴様を監視するために行動を共にしているだけだ!何を研究するかは知らんが、協力する気などない!!」 「はいはい。分かってるよ」 ソフィスタは、ハエでも払うかのように、メシアの目の前で手を振る。アズバンは苦笑している。 「ははは…そうだ、研究で思い出した」 アズバンがポンと手を叩いたので、ソフィスタとメシアは、同時にアズバンへと顔を向ける。 「ソフィスタくん。もしよければ、私と一緒に午前の実験に立ち会ってはくれないか?」 「実験?何のですか」 「君の肩にいるスライムのように、魔法生物を作り出した子がいてね。それを公開するための実験さ。今回、その実験を行う子が、ぜひ君にも立ち会ってもらいたいと言っているのでね。私も立ち会うことになっているから…」 とたんに、メシアが巻衣を脱ぎ捨て、アズバンの胸倉を掴んだ。 「魔法生物だと!?ソフィスタの他にも、魔法生物を作り出そうとする愚かな輩がいるというのか!!」 急に怒り出したメシアに、アズバンは驚いて声も出せずにいる。 「メシア!やめな!!」 ソフィスタの肩から、セタとルコスが体を伸ばし、メシアに巻きついた。メシアはアズバンから引っぺがされる。 「ゲホッゲホッ…ど、どうしたんだ?メシアくん…」 アズバンは、咳き込みながらメシアに尋ねた。 「どうしたもこうしたもあるか!自然の理、この世の万物の運命に逆らう行いを、貴様は指をくわえて見ておるのだな!ならば貴様も罪人だ!!」 セタとルコスにより、体の自由を奪われているにも関わらず、メシアの気迫は、ソフィスタとアズバン、周りの生徒たちの背筋をも凍らせた。 「だが、その前に、実験を行うという者の元へ連れてゆけ!!その者から先に裁きを下してくれる!!」 暴れるメシアを落ち着けようと、ソフィスタは彼の肩を掴んだ。 「熱くなるなよ!あんたが神に与えられた使命ってのは、あたしに魔法生物を作り出す技術を捨てさせることなんだろ!他の奴らがやることなんざ、放っておきな!!」 しかし、その言葉は、逆にメシアの怒りを増幅させた。 「…っ何だと!!!」 メシアの筋肉が膨れ上がり、セタとルコスの戒めを、強引に解いた。 そして、休む間もなく右手を振り上げ…。 「…っ!!」 ソフィスタが、メシアの行動に気がついた時には、遅かった。 メシアの手の平がソフィスタの頬を打ち、乾いた音を立てる。 ソフィスタは、肩に張り付くセタとルコスと共に、勢いよく横に倒れた。アズバンを含む、周囲の人間は、思わず息を呑む。 「…あ…」 床に倒れたまま、頬を押さえて茫然としているソフィスタを、メシアが無理矢理立ち上がらせる。 「貴様ァ!!やはり昨日の私の話を忘れたようだな!!歪んだ方法によって作り出される生命が、どれほど哀れなことか!そして、その方法で生命を作り出すことが、どれほど罪深いことかを!!」 メシアはソフィスタに怒鳴りつけるが、ソフィスタは、まだぼおっとしている。 「やはり貴様には、今すぐ罰を与えねばならんようだな!己の罪深さ、その身をもって知るがいい!!」 そう叫ぶと、メシアは今度は拳を振り上げた。しかし、ソフィスタは何の反応も示さない。 「…?おい、ソフィスタ!ちゃんと聞いているのか!?」 そんなソフィスタの様子を妙に思い、メシアは彼女の顔を覗き込もうとした。 「…ふっ…ふっ…」 ソフィスタはうつむき、体を小刻みに震えさせる。 「…ソフィスタ?」 頬を押さえ、まるで泣いているかのように嗚咽を漏らすソフィスタの名を、メシアが小さく呼んだ、その瞬間…。 「ふっっっっっざけんじゃねええぇぇぇぇぇ!!!!」 発光したソフィスタの拳が、メシアの顔面に叩き込まれた。同時に、光は強烈な破壊力を帯びて爆発する。 メシアは体を回転させながら、数メートル後ろへ飛ばされ、床で数回バウンドして倒れる。 ソフィスタは、倒れたメシアの元まで早歩きで向かった。 「てめェ!!爬虫類の突然変異のクセして人様の顔をぶっ叩きやがったな!!しかも二度目は拳で殴りつけようとしやがって!!!その無礼な手を分解して皿に並べられてぇのかよ!!!」 完全に我を忘れて怒っているソフィスタは、鬼のような形相で、身の毛も弥立つ暴言を吐いては、すでにのびているメシアを、何度も蹴り上げた。 その様子に、周囲の者たちは怯え、肩のセタとルコスでさえ縮こまっている。 「この常識外れの単細胞トカゲが!!ちったぁわきまえやがれえええぇぇぇ!!!!」 叫びながら、ソフィスタは思い切りメシアを蹴り上げると、同時に特大の魔法球を叩き込んだ。 光の爆発は、メシアの体を床にめり込ませ、その余波で、近くの窓ガラスに亀裂を走らせた。周囲の者たちは、すさまじい爆音に耳を塞ぐ。 ソフィスタは息を切らしており、メシアはピクピクと体を痙攣させている。気絶しているだけのようだが、よく生きていられるものだ。 「…ソ、ソフィスタくん、やりすぎじゃないか…?」 恐る恐るとアズバンに声をかけられたソフィスタは、はっと我に返る。 「…あ…」 そして、すぐ足元で倒れているメシアを見て、「あちゃ〜」と顔を伏せた。 「ちょっとやりすぎたなあ…」 いや、ちょっとではなく、かなりやりすぎだ。 ソフィスタとメシアを除く、その場にいる全員が、心の中でツッコミを入れる。 ちょうどその時、ソフィスタがくるっとそちらへ振り返ったので、彼らは震え上がった。しかし、ソフィスタは、いつもの涼しげな表情に戻っている。 「壊れた床やガラスは、後でどうにかするので、放っておいて下さい。それと、アズバン先生。午前の実験には立ち会いません。では、失礼します」 言うだけ言うと、ソフィスタはメシアの体を抱き起こし、軽く背負った。 「よっ…と、重いな、この筋肉トカゲは。セタ、ルコス、手伝いな。あと、メシアが脱ぎ捨てた布も取ってきてくれ」 そして、メシアの足をずるずると引きずりながら、ソフィスタは、その場を去った。残された生徒たちは、唖然とソフィスタを見送る。 そんな中、アズバンが呟いた。 「…初めて見たな。あんなソフィスタくんは…」 * メシアを校舎内の保険室に担ぎ込むと、ソフィスタは、彼を大きめの寝台の上に横たわらせた。 床を這ってメシアを支えていたセタとルコスが肩に張り付くと、ソフィスタは、ふうっと一息つく。 …まだ気絶しているのか。ま、当然だろうけど…。 今だ白目を剥いているメシアの全身を、ソフィスタは、ざっと眺めた。 体には怪我をした様子は見られないし、服も破けてはいないが、最初にソフィスタが魔法と一緒に拳をめり込ませた顔面は、さすがに腫れており、固まった鼻血がこびりついている。 よくこの程度の怪我で済んだものだと、自分でやっておきながら、そう思う。 …気を失ったのは、脳震盪を起こしたからだろう。 後遺症はあるまいかと、ソフィスタはメシアを心配するが、もしそれで馬鹿が治れば、それに越したことはないと、考え直す。 …ったく、このトカゲは。何も顔を殴らなくたっていいだろ…。 ソフィスタは、部屋に置いてある冷蔵庫の中から、よく冷えたお絞りを二つ取り出すと、一つはメシアの顔に乗せ、一つはズキズキと痛む自分の頬に当てた。ちなみに、冷蔵庫の動力は魔法である。 痛みによって帯びている熱が、少しずつ冷やされていく。 …しかも、拳で殴ろうとまでしやがって…あたしは女だってのに…。 そう考え、ソフィスタは、はっとした。 …女…ね…。 自分の研究以外には、ほとんど無関心で、オシャレや異性との交際とは無縁のソフィスタは、自分が女性であるということを、あまり意識したことはなかった。 女性としての最低限の常識はわきまえているが、それ以上は、自分が女であることを示すことも、全くなかった。 しかし今、ソフィスタは自分が女であるということを、はっきりと意識した。 …そういえば、昨日だって…。 ソフィスタは、昨日のメシアとの口論を思い出す。 言い争っている最中、メシアはいきなりソフィスタに「子供を産め」と言い出した。 この発言には、誰もが己の性別を、はっきりと意識することだろう。男と女という性が、どのような役割を持っているかは、その時に示されるのだから。 しかし、問題はその後だ。 ソフィスタはメシアに「愛がない相手の子供は産めない」と言った。 相手が男性であれば、愛がなくても子供は産めることは産めるのだが、男と女としての関係を持つなら、やはり相手は愛する男性でなければ嫌だったのだ。 そんな恋愛的な感情を、初めてメシアによって引き出されてしまった。 思えば、我を忘れるほど怒り狂ったのも、今日が初めてのような気がする。 昨日は、恥ずかしいあまりに怒っていたが、今日は心底メシアを憎む気持ちで怒った。強く誰かを憎むことも、初めてなのではないだろうか。 常識が通用しない上に、バカ正直で直情的なメシアの性格が、ソフィスタの感情を引き出したのだろうか。 …まったく。こいつと一緒にいると、調子が狂うな。 ソフィスタは、一つため息をつくと、メシアの巻衣を彼の体にかけてやった。そして、寝台のすぐ隣にある椅子に座る。 …それに、殴られたのも初めてだ…。 暴力沙汰に巻き込まれれば、己の頭脳と魔法力に物を言わせ、セタとルコスを作り出してからは、ケンカは二匹に任せきりになったので、殴られるどころか、殴ることも、ほとんどなかった。 …親にも殴られたことないってのにな…。 ソフィスタは、もう一度ため息をつくと、しばらくぼおっとメシアを眺めていたが、ふと、壁にかかっている時計へと視線を移した。 午前九時。そろそろ授業が始まる頃だ。 …もう保険の先生が来てもいいはずなんだけど…。 いつもなら、ここには保険医がおり、体調を崩した生徒の面倒を見ていたりしている。しかし、今日はやけに静かだ。 …まあ、いてもいなくてもいいんだけどね…。 ソフィスタがそう思った矢先、後ろで引き戸が開く音がした。誰かがこの部屋へやってきたのだ。 …先生? ソフィスタは、そちらへと顔を向けた。 部屋の入り口に、ソフィスタと同じくらいの年齢と思われる少女が立っている。 「…ソフィスタさん?」 彼女は、少し驚いた様子で、ソフィスタの名を口にした。 やがて、平静を取り戻した彼女は、微笑みながらソフィスタに歩み寄った。 「ここにいたのね。保健室にいるなんて珍しいわ。怪我でもしたのかしら」 彼女の表情は穏やかだが、ソフィスタは無表情で、彼女を見ている。 「いや、別に。ところで、あんた誰?」 涼しげな顔でそう言われた彼女の微笑みが崩れる。 「…まあ、あなたのことは、有名だから知っているけれど…私も、あなたと同じエリートクラスの同級生なのよ。忘れたの?」 「あ、そうなの」 ソフィスタは、まるで彼女に興味がないように、そっけなく言うと、ふいっと前へと向き直る。そんなソフィスタからは見えないが、彼女は、かなりムッとする。 「…私はミーリウよ。よろしく。…で、頬を怪我したの?私が看てあげるわよ」 ミーリウはそう言うが、ソフィスタは軽く手を振って断った。 「いいよ。少し腫れているだけだから」 「やっぱり怪我をしているんじゃない。でも、どうして?」 「どうでもいいだろ」 「よくないわよ。今日は保険医さんは…」 そう言いかけて、ミーリウは、寝台で横たわっているメシアに気付き、はっと息を飲み込んだ。ボコボコにされた顔は、お絞りで隠されているので分からないが、人間とは違う彼の姿に驚かされたようだ。 「…誰、この…人?」 「ああ…ま、気にしないでくれ」 「いやでも気にするわよ。見たことのない服を着ているし、肌の色だって普通じゃないわ」 ミーリウは、驚きながらも、じろじろとメシアの全身を眺める。 「…もしかして、あなたが作った魔法生物?今度は人型のものに成功したの?」 ミーリウは、そうソフィスタに問うが、ソフィスタはうっとうしそうにミーリウをあしらう。 「何だっていいだろ。…で、あたしに何か用?」 「え?」 「あたしを探していたんじゃないのか?ここにいたのねって言っていたから、そう思ったんだけど」 「あ、そうね。ええ、あなたを探していたわ」 そう言うミーリウの表情に、どこか怪しげな雰囲気が漂っていたが、ソフィスタはミーリウの顔を見ていなかったため、気がつかなかった。 「校長が、あなたに話があるって言っていたのよ。今朝、あなたが何か揉め事を起こしていたみたいだから、それについてじゃないかしら?」 「ああ、確かに問題を起こしていたけど…丁度いい。あたしも校長に話があったんだ」 ソフィスタは、頬を押さえたまま立ち上がろうとした。しかし、「あっ」と声を上げ、メシアを見る。 「…でも、こいつをほったらかしにしておくわけにはいかないか…保険の先生が来るまで待っていたほうが…」 「無駄よ。保険医さんなら、今日は来ないわ」 ミーリウが、あっさりと言った。 「何でも、今日は保険医さんの兄弟の結婚式があって、それに出席するから、学校には来れないそうよ」 「そうか…じゃ、コイツはどうしようか。本当に世話の焼けるやつだな」 ソフィスタがメシアの腕をペチペチと叩くが、メシアは目を覚まさない。 「あら、じゃあ私が面倒を見ていてあげるわよ」 明るい声で、ミーリウにそう言われ、ソフィスタはミーリウを見る。 「保険医さんがいない時は、私が代わって具合の悪い人を看てあげたりすることになっているの。だから、この彼のことも看ていてあげるわ。怪我をしているなら手当てもするわよ」 ミーリウは、得意気な表情で、ソフィスタの背中を軽く叩いた。そんなミーリウを、ソフィスタは馴れ馴れしく思うが、口には出さなかった。 「手当ての必要はないよ。顔の腫れも、だいぶ引いたみたいだし…ま、校長とはさっさと話を済ませて戻ってくることにするよ。まだ気絶しているだろうからね」 ソフィスタは立ち上がると、自分の頬に当てていたお絞りを、洗面台へ放り投げた。 「でも、何かあったら困るから、ちょっと見張っておいちゃくれないかな。頼める?」 「ええ。任せてちょうだい」 ミーリウは、にっこりと笑った。どうやら、快く引き受けてくれたようだ。 「そう、ありがとう。じゃあ、あたしは行くけど…目を覚ましたら、勝手に外へ出ないよう、ロープか何かで手足を縛っておいてね。ミノムシみたいにぐるぐる巻きにしていいから」 ソフィスタは、涼しい顔で、ひどいことを言う。 「え…わ、分かったわ。じゃあ、行ってらっしゃい」 ミーリウは、少し引きつった笑顔で、部屋から出て行くソフィスタに言った。 振り返りもせず、早歩きで去っていったソフィスタの足音を、ミーリウは不機嫌そうに聞いていたが、やがて、口元に微かな笑みを浮かべた。 (続く) |